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尾野真千子さんの 語りたくなる1本は…

Huluオリジナル連続ドラマ「フジコ」の配信を記念して、主演を演じる尾野真千子さんに語っていただきました。

『フジコ』

正直、最初は断ろうと思いました
「フジコ」への出演の決め手は何だったのしょうか?
最初にお話をいただいた時は、このご時世に殺人鬼を演じるのはどうなのだろうと悩み、断ろうかと思ったんですけど、映画の「凶悪」を観て考えが変わったんです。残酷なことをしてるんですけど、お芝居として面白く見せていることに感動して、そういうお芝居を自分ができるかどうかわかりませんでしたが、演ってみたいと思ったんです。
本作は動画配信サービスのHulu製作ですので、地上波ではできないような表現も多く描かれていますよね?
演じながら、いいの?と思う瞬間もありました。でも、端から“いいよ!”と言われていたので、存分にやらせていただきました。ただ、思い切り血を見せるシーンなどでは、いざ「やっていいよ」と言われると一瞬戸惑ってしまって。でも、次の瞬間には思い切り演じましたけど(笑)。今回、思う存分にできるステージを与えていただけて、役者としてすごくうれしかったです。
全編に戦慄と狂気が漂う作品ですが、まず仕上がった映像を見ての感想はいかがでしたか?
台本を読んだ時と、映像を見た時の印象がまったく違いました!真逆というぐらい!!つまりもっと良くなってたんです!音楽などが加わり、文字だけでは伝わりきらないことが詰まっていて、自分が演じたとは思えないほどの仕上がりになっていました(笑)。
演じるフジコは幼い頃に一家惨殺事件の生き残りとなり、その後は母親のような女にはなりたくないと思えば思うほど道を踏み外し、虐待や殺人をしてしまった人。共感するのが難しい女性だと思いますが、どう演じたのでしょうか?
フジコは普通の女の子だったのに殺人をせざるを得なくなってしまって、そのまま成長してしまった女性で、すごく可哀そうな人だなと思いました。とはいえ、共感はできませんでしたが。例え、それが殺すシーンであっても私ならどうするかな?と考えながら演じました。それから、台本は読み過ぎないようにしました。台本を読み過ぎると「どうして、こういう行動をするのか?」と不思議になって監督に聞きたくなってしまうんですよね。作品はある種、監督のものですので、演じる時点で自分だけのものにしてしまってはいけない。今作に限らずですが、みんなで共有しながら作っていきたかったので、そこまで読み込まないようにしました。
ということは、村上正典監督の演出で作られていった感じでしょうか?
とは言いつつも、村上監督は結構、やりたいようにやらせてくれる方なので、いろいろアイデアも出しました。例えば、フジコが逮捕されているところから話が始まるので、主な撮影場所は面会室。そこではほぼ座っているだけですが、「たまに立とうか?」と言われた時に私が「机を叩いていい?」と聞くと、「いいよ、一回やってみよう」と受け入れてくださる。そういう感じでいろいろやらせてくださったので、私が思うことも監督が思うことも取り入れながらできていった気がします。
ただ殺人の話と片付けてほしくない!
では、第1話を見て、まず語りたいと思った点は?
過去の回想シーンに登場する子供の痛みです。フジコに虐待されているので、もちろん痛いのですが、映像で見た時の方がより痛みを感じました。自分が思っていたよりもさらに突き抜けていて、心に突き刺さってきたんです。何と言うか、主に虐待されている長女役の子が母親役の私を受け入れてくれていて、やらされている感がまったくなかったんですよ。演じている時は叩くことにも、お芝居を言葉にすることにも一生懸命で互いのことを考えている余裕はなかったのですが、ちゃんと受け入れてくれていた。そういう気持ちが映像から伝わってきて、まったく泣くシーンではなかったんですけど、涙が出てきました。
痛みはフジコ自身も抱えてますよね? 殺人で人生をリセットしようとする裏には、かつて身近な人に言われた“クズの子はクズ”、“カルマよ、カルマ”というセリフが脳裏に焼き付いていて、それを払拭することができずに狂気に満ちていくわけですから。
リセットすることはいいですが、人を殺すことは正しいことではないですし、リセットしたことにもならない。本当に可哀そうな人です。でも、“カルマよ、カルマ”というセリフはずっと残りますからね。ネタバレになるので誰かは言えませんが、あの役者さんの声で言われるとゾッとするんですよ!独房の中で幻覚を見るシーンがあるんですけど、その幻覚がずーっと“カルマよ、カルマ”と言っていて、まさに呪いなんです!あの声で言われるとチーンって聞こえてきて、演じながら、私、死ぬんだなって(笑)。
なんだか、面白い話になってきてますけど(笑)。
あまりの怖さから一周回って、面白くなってしまってるんです。このドラマを友人に語るなら、まず「意外にいいよ」と伝えたいです。端的に見ると「人殺しのドラマでしょ?」と言われると思いますが、いやいや違うんですよ、と!グッとくる部分も多々あって、特に子供たちの存在がすごく胸に響いてくるんですよ。フジコ家族にもいい時期があったのですが、その幸せな場面が逆に痛い。そして、ツラいシーンの合間の家族の場面が心に問いかけてくるんです。女性として自分は大丈夫かな?って、考えさせられるんです。軸にあるのが親子の話なので、母親を思い出したりする方もいるかもしれません。ですので、ただ殺人の話と片付けてほしくないんです。ふたを開けてみると殺人の奥にある人間の深部がたくさん描かれていて、いろんなことを問いかけてくれる作品でしたし、演じながら、私自身の気持ちもたくさん掘り出されましたので。
全6話ですが、さまざまな事件、そして驚がくの事実が明かされていくので、あっという間に見てしまいそうですね。
本当に第1話なんて、あっという間でしたよ!通常、ドラマは45分で編集するらしいですが、今作は60分ぐらいあるそうなんです。毎話、スペシャルドラマ状態ですが、それでもあっという間。全話見たスタッフさんはもう一度、第1話に戻って見直してしまったそうです(笑)。ただ、不安もすごく大きいんです。凄惨なシーンがあるので、第一印象で敬遠してしまう人もいると思うんですね。でも、最初にそう思った私自身がすごく心を動かされたので、よりたくさんの方に見ていただきたいです!
バックドラフト
Huluオリジナル連続ドラマ「フジコ」全6話一挙配信
一家惨殺事件の生き残りとしてトラウマを負った11歳の少女フジコ。だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。「あたしは人生をリセットできる女」――、呟きながら殺害を繰り返していく。なぜ彼女は殺すのか?誰が彼女の家族を殺したのか?愛への渇望か、幸せへの執着か、真実が明かされるとき、最高の後味の悪さと驚愕のラストが、観る者を戦慄と慟哭へと突き落とす。
尾野真千子
尾野真千子(おのまちこ)
1981年11月4日生まれ、奈良県出身
1997年、映画「萌の朱雀」で主演デビュー。2011年、NHK連続ドラマ小説「カーネーション」など主演作多数。現在、TBSドラマ「おかしの家」に出演中。また映画「起終着駅 ターミナル」が公開中。2016年には映画「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」、「エヴェレスト−神々の山嶺—」、「後妻業」が公開予定。
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